53億円の相続オファーを貰った話【詐欺には気を付けよう】

新型コロナの影響で、詐欺被害が増えているようです。そういえば私も最近そんなお話をいただいたな・・・と思い記事にしてみました。これは2020年3月上旬に経験した話です。

130万を失った3日後、53億円相続の誘いのメールを受信

新型コロナが世界的に流行り、コロナショックと言われる大暴落が起きました。

私が投資していたドル円もみるみる下がり、まさかの130万円赤字でロスカットされてしまいました。今までプラスになってきた分が一気にマイナスになってしまいました。

ショボンとしていた3日後、Gmailに一通の英語のメールを受信しました。その内容が「53億円を相続しませんか」というお誘いでした。

ちょっと何言ってるか、わからないです

唐突過ぎて意味がわからなかったので、迷惑メールだと判断する前に、詳細を聞き返してみました。

すると翌日には返事が返ってきて、よくよく内容を読むとこんな内容だったんです。

・私はUAEのとある銀行員である
・私の懇意にしている友人が昨年末、巨額の遺産を当行に遺したまま亡くなった
・銀行の人間は、彼が亡くなったことをまだ知らない
・しかし相続人が指定されていないため、まもなく口座がクローズされて銀行の上層部の人々の資産となってしまう
・既に彼らには十分な金があるから、それはもったいない
・僕が君を相続人に仕立て上げてあげるよ、だから山分けしよう
・問題なければ、弁護士に君の住所・氏名・職業・電話番号を連絡して
・この話は誰にもしちゃダメだよ、2人だけの秘密だ

なかなかよくできたストーリーですが、信じられる理由がありません。さらに突っ込んで詳細を聞いてみました。

・僕の友人は君と苗字が同じだから、大丈夫
・僕がしっかり銀行のシステムを書き換えて、君を相続人に登録するよ
・手続きは、この銀行のお抱えの弁護士がやるから、君は住所・氏名・職業・電話番号を連絡するだけでいい
・弁護士に連絡するとき、英語が不安だろうから僕が手助けするよ
・信じたら、早く情報送って
・ちなみに弁護士は、僕たちがこうやって打ち合わせしていることを知らないからね
・2人だけの秘密だよ

身近な弁護士すら丸め込んでいないのに、異国の素人に片棒を担がせようとするなんて、なんて計画性のない犯罪のお誘いでしょうか。

相変わらず信じられる理由はないので、ついでにこの銀行員と死亡した友人の顔写真、出会いと友人の生い立ち、人となり、職業と年齢、もしお金を山分けしたらこの銀行員は何をするつもりなのか聞いてみました。

・君の聞きたいことはわかった、まず僕のことを信頼できるようにパスポートの写真を送るよ(スマホのカメラで撮影したらしい、縦長サイズの写真が添付されて送られてくる)
・僕の友人の名前はMichael, オイル関連の仕事をしていて、僕たちが知り合ったのは銀行員とその顧客という立場でだった
・彼は両親とも日本人の一人っ子で、早くに両親を亡くし、配偶者も子供もいなかったんだ
・彼と僕はプライベートでメッセージをする仲で、去年の10月ごろ「スリランカに出張に行ってくる」と連絡があった数日後、現地で大地震があり、そこから連絡が途絶えてしまった
・彼が死んだことは間違いない・・・そして彼と同じ苗字を持つ君なら、うちの銀行から相続金を受領できる
・ちなみに山分けしたお金は、僕のビジネスに使いたいんだ。どんなビジネスかはまだ考えていないけど・・・UAEからは出るつもりだよ

分かりやすく箇条書きにしていますが、実際には随筆かってくらい長々とした英語のメールで、いかにも整理整頓のできない人間の文章・・・ちょっとうんざりしてきました。

色々情報をもらいましたが、この銀行員と死んだ友達Michaelさんのプライベート写真は、長文ではぐらかされています。関係性がわかるよう一緒に写った写真が欲しかったんですが・・・。しかし、パスポートの写真からこの銀行員がアメリカ人であるということが判明しました。

本気で犯罪に誘うには、ザルすぎる計画

さて、ここから色々と裏付けを調べる楽しい作業に入りました。

まずメールの差出人の名前で、SNSで検索すると、LinkedInとFacebookで確認できました。パスポート写真と同じ顔立ちの、日焼けした白人ぽい60代くらいの男性で、同僚と集合して笑顔で写っている写真までありましたので、これは本物っぽいです。本当にUAEの銀行に勤めています。

ただし、人事部に。

人事部が顧客情報を好きに改竄できる銀行って、普通に管理体制がヤバイですね。あり得ません。

そしてこの銀行員の友人が亡くなったという大地震。スリランカで2019年10月ごろに起こったとメールにあったのですが、調べても調べてもそんな情報は出てきません。

もし10月に大地震が起こって大勢の人が亡くなったなら、甚大な被害を受けたスマトラ沖地震から15年を悼む記事を2019年12月に出している場合ではありませんしね。

Indian Ocean tsunami remembered, 15 years on

そのMichaelのやっていたオイル関連の会社の名前ももらえたのですが、これは大した情報が見つかりませんでした。従業員がいるのであれば、SNSなりHPなり悪評なりが検索で引っかかるはずなんですけどね。

メッセージの連絡が途絶えたくらいで、勝手に友人を死んだことにしている銀行員には、ほかにも突っ込みどころが満載です。しかし、ひとまず英語の長文メールの解読に疲れました。ここまでで、「私は力になれないよ、Good Luck!」と返信して、案件クローズ(笑)しておきました。

米国人銀行員は、多分被害者

さて、ここまで読んで、「この銀行員やばいな・・・どうしてしかるべきところに通報しないの?」と思った人もいるでしょう。私の推測ではこの銀行員は被害者です。

メールでパスポート写真が届きましたが、これは流用されてきたものと思われます。

私は過去にNY滞在中、現地在住の日本人から部屋を月替りで借りて引っ越しまくっていたことがあるのですが、海外で部屋を借りる時に身分証明書としてパスポートの写真が要求されたのがほとんどでした。しかも大抵の場合、スマホのカメラで撮影して終わりでした。

そのオーナーから横流しされるか、クラウド上の写真が拝借されたか・・・いづれにせよ、そこから流れ出すのは容易です。

ちなみに私とやりとりしていたメールアドレス自体はフリーアドレスなので、どこでも誰でも作れるものです。誰かになりすますのなんて容易いものです。

でも、おっちょこちょいな首謀者かもしれないじゃん!

そうですね、仰る通り、非英語圏の人間に対して脳味噌垂れ流しの長文メールを送ってくるようなバカなアメリカ人であれば、そんなおっちょこちょいも、しでかすかもしれません。女性宛のメールなのに「Brother」と文中で呼びかけてしまうくらいおっちょこちょいですし。

もしこの米国人銀行員が首謀者張本人だったとしたら、私は喜んで、米国国税庁に教えて差し上げます。

他の人を丸め込んで、Michaelさんの口座にある満額の半分である26億5千万円をこの銀行員が報酬として受領できたなら、だいぶ税金が取れるし、マスコミのいい標的にもなるはずですから、協力すれば一躍・・・ですね。

米国の機関から情報提供要請があれば喜んで協力します

ということで、上記の個人情報を使われているアメリカ人もこの詐欺事件のために利用されている被害者だと考えられるので、いつかFederal Agentの皆様から問い合わせが来るのではないかと密かに期待しています。

お問い合わせは仕事問い合わせと同じく、Twitterのメッセージもしくは問い合わせ用のGmailアドレスまでどうぞ。お待ちしています。(来ないと思いますし、そもそも日本語で検索かけないと思いますけどね)

余談:個人情報を渡した勇者も

執筆のための調べ物をしていて見つけたのですが、約4年前に同様のきっかけで連絡を受け、実際に個人情報を先方に送った人がいました。・・・勇者です。(私は一切自分の情報を送っていません)

ちなみにこの方の受領したような登記簿の写しなどの書類って、画像の編集を少しかじったことのある人ならとても簡単に偽造できます。(やっちゃだめだけど)

美味しい話は乗るのではなく、重箱の隅をつつくがごとく情報を引き出せるだけ引き出して、ネタにするのが私のおすすめです。